■ 1987年夏 初めての北海道ツーリング ■

1987年の夏も終わるころ、友人の馬場氏とともに原付2台で実家のある静岡から大学のある北海道まで帰ることにした。
原付で北海道に行くというのはなかなかくたびれるものだ。
でも当時の自分は「ツーリング」というものは初めてだったし、北海道までの道のりがどのくらい長いかなんて、想像もつかなかったのである。
とはいえ、旧車の原付で自走して北海道まで行くのはツライと考え、静岡から新潟まで走っていき、新潟から小樽まで「新日本海フェリー」で行くルートに決めた。

北海道に向かう日の早朝、馬場氏は私の実家に来た。いよいよ初めてのツーリングである。
馬場氏はMTXの荷台に荷物満載。
Gパンに長袖のシャツ、その上にジャケットを着ていたと思う。
さらにオフロード走行用のプロテクターも装着して、ディバッグを背負っている。
MTXが50ccに見えないせいもあって、いかにも長距離ツーリングの装備。
一方、自分はハスラーの荷台に雨合羽を自転車用のゴムひもでくくりつけ、ディバッグ背負った姿だ。
半袖のシャツにグレーのスラックスという姿。
誰もツーリングだとは思わないだろう。

新潟までのルートは、静岡県富士宮市から国道139号線を北上、山梨県に入り、河口湖を抜け大月市へ。
そこから国道20号を東に向かい、相模湖を抜け大垂水峠を越えて東京都八王子市へ。
八王子からは国道16号、国道407号を通り埼玉県熊谷市へ。
熊谷からは国道17号を群馬県前橋方面へ。
そのまま国道17号を北上、三国峠を越えて新潟県へ。
あとは国道8号に抜けてまっすぐ新潟市内へ。
新日本海フェリーの埠頭までは1日で行くつもりだ。

■1日目
スタートして最初の難関は朝霧高原で訪れた。
坂道を登らないのだ。
現代の原付なら平気で登っていくような坂を、20km/hくらいでようやく登っていく。
エンジンの回転があがらない。
ホントに新潟までいけるんだろうかと不安になった。

しかし朝霧高原をぬけ、西湖、河口湖のあたりに着く頃にはエンジンも絶好調。
国道20号も快調に相模湖へ。
大垂水峠もあっさり越えてしまった。

八王子で最初の給油。
正確な距離は憶えていないが、出発してから120kmくらいだったと思う。
ハスラーの燃料タンクは5リッター程度なので、リッターあたり30km以上走っていたと思う。

八王子からは道路も平坦なので、サクサク進む。
入間あたりで昼食をとった。
ここまで来ても、新潟までがあとどのくらいなのか見当もつかない。
高速道路を使えれば、距離から考えてあと何時間とか判断できるのだが、原付では一般道を行くしかないし、数百キロの距離を走るのは初めてなので、判断が出来ないのだ。

熊谷に抜け国道17号に出ると、道幅が広くて直線が多いのでさらに快調だ。
高崎を抜け前橋まで気分もヨイ。
前橋で2度目の給油。この時点で午後4時くらいだったと思う。
ガソリンスタンドのお兄さんに、新潟までの所用時間を聞く。
「4時間ぐらいかな」とのこと。
ということは午後8時くらいには新潟に着けるかな?

国道17号を北へ。
沼田のセブンイレブンで休憩中、ハスラーのエキパイがオイルまみれになっているのに気づく。
排気口からオイルがにじみ出てきているようなカンジなのだが、実はこのときまで2ストロークのバイクがこんなにもオイルを排出するものだとは思っていなかったのだ。
ちょっと心配になって、すぐ近所のガソリンスタンドに行って見てもらう。
スタンドのお兄さんは、別に異常がないという。
2ストロークオイルが不足していたので「追加しますか?」と聞かれたので、お願いした。
(ガソリンスタンドでオイルを買うと高いのではないかとドキドキしたが、500円だったのでホッとしたのを憶えている。あぁ、貧乏学生。)

さて、月夜野からは三国峠を越えなければならない。
三国峠を越えれば、あとは新潟まで大きな峠はない。
これさえ越えれば…。

しかし、三国峠は想像以上に勾配が急だった。
朝霧高原のときと同じで30km/hも出ない。
馬場氏のMTXは快調に上って行くので、先に行って待っていてくれる。
私のハスラーは冷却効率をアップさせるため、「金属クリップチューン」なのだが、急坂は熱ダレ気味だ。
ちなみに「金属クリップチューン」とは、冷却フィンに文房具屋で買った金属クリップを10個ほど着けてあるだけのもの。
冷却効率がアップしているのか疑問だけど、無いよりマシだと考えて取り付けたのだ。
しっかしぜんぜん登らない。
あまりにも登らないし走っても走っても上り坂は尽きないので、途中であきらめようかと何度も思った。
でも今から下りても北海道までどうしたらいいのかわからないので先に進むしかない。

だいぶ時間をかけて、なんとか三国峠のイタダキまで来た。
別に歩いて上ってきたわけではないので体力は消耗していなかったのだが、日も暮れてきて精神的にはだいぶ消耗していた。
もう非力なゲンチャリはコリゴリだと思った。
今思えば、初めてのことで、ツーリングを楽しむ余裕が無かったんだなと思う。
峠を越えるとあとは下るだけなのだが、上りでかなり時間を使ってしまったために既に太陽もおちかけていた。

そんなこんなで結局この日は日も暮れて疲労も限界に近づいてきたので、新潟市街よりだいぶ手前の長岡市街で一泊することにした。
長岡駅前までやってきて、近くにあった「大黒」というビジネスホテルに泊まった。
フェリーは翌日の朝10:30出港なので、早めに出発すれば余裕で間に合うだろう。

■2日目
ビジネスホテルを朝7時ごろ出発。
長岡市街から新潟市街までは50km程度。
新潟駅前までは1時間くらいであっさり着いた。
しかし新潟港のフェリー埠頭までの道順はすごくわかりにくかった。
(現在は標識も整備され、そんなことないですが)
9時頃にはフェリー埠頭に到着。
フェリーは10時30分発の小樽行きだ。

さぁ、初めての長距離フェリー!
新日本海フェリーの新潟−小樽航路はとてもフェリーが豪華で、船内の雰囲気も良く、一発で気に入った。
船酔いを心配していたのだが、ぜんぜん酔うことはなかった。
カフェテリア式の食事も、値段は高いが種類が豊富でグッドグッド!
後にこの航路は最も良く利用する航路となる。
新潟から小樽までは約17時間。のんびり行きますか。
船内には映画館やゲームコーナー、カラオケ設備なんかもあって、退屈しないですむ。初めての船旅は楽しいものになった。

■3日目
早朝5時、小樽に到着。
朝もやに包まれている小樽港は、旅情をそそる。
いやぁ、いろいろあったけど、ようやく北海道到着。
ここから札幌の馬場氏宅までは約40km。国道5号線をひた走る。
やっぱり北海道の道はいい!
しかし、早朝とはいえ国道5号線を走るクルマはみんな飛ばすなぁ。
原付の我々にとっては結構こわい。

6時過ぎには札幌に着いてしまう。
この日は馬場氏の家にお世話になり、札幌市内観光としゃれ込む。
しかしなんと、ススキノの交差点で歩道にハスラーを停めようとして後輪がスリップ!
バイクでコケタのはこのときが初めてだった。
疲れていたのと寝ぼけていたので注意力が足りなかったのだろう。
損傷は無し。
タチゴケに近いのでグリップエンドとチェンジペダルの先にキズが付いたくらいだった。
もともとキズだらけのバイクだったので気になるレベルではない。
自分にも怪我はなかった。
でも何故か笑いが止まらなかったのを憶えている。

■4日目
夏休みもまだ残りがあるので、私のアパートのある岩見沢市に馬場氏と向かう。
国道12号は快調だ。道幅も広く、ほとんど直線。
札幌から岩見沢までは約50kmあるのだが、郊外は信号もあまり無いため、原付でも1時間少々であっさり岩見沢市に着いてしまう。
大学の裏の我が家に到着!
静岡からの実走行は約500kmだが、ずいぶん長く感じられた。
こうして初めてのロングツーリングは終了したのだった。


 

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